[:shoot]
プテラノドン

物語とゴミ箱は切り離せない―

その夜、籠から逃げだしたハムスターが家から逃げだした。
飼い主の女の子が軒先で名前を呼んだのを私は聞いた。
しかし、公園のベンチから立ち上がる気が起きなかった。
滑り台の下から茶色い野良猫がこちらを睨みつけていたからだ。
ジェニーも今頃、野良猫に睨まれているか、既に
とっ捕まっているかもしれないと思うと気が重くなった。
彼女の恋人は受話器越しに「大丈夫、また買えばいい」と言った。
彼女はこんな男とは、いっそ別れた方がいいのかもと考えながら
住宅地の路上をさ迷い歩いた。二人がそのやりとりを
律儀にベッドの中でも続けている間に、私は潰した空き缶に
願いを込めてゴミ箱めがけてシュートした。
その結果、ジェニーは路地裏で知り合ったドブネズミたちと共闘し、
野良猫を撃退することに見事成功した。
とはいえ、まだまだ旅は始まったばかり。これから先も、
ジェニーにピンチは何度も訪れるだろうし、安住の地は遥か向こう。
だから私はその時に備えてこうしてビールを飲むのだよと彼女に言うと、
「私たち、別れても大丈夫そうね」と言って彼女は家を出ていく。


自由詩 [:shoot] Copyright プテラノドン 2010-08-15 00:09:43
notebook Home