身体のこと
はるな


身体がすごくくたびれているときには、マッサージのことを思い浮かべる。
マッサージを受けるのがだいすき。手の平を腰にあてられて、くっと力をいれられると、わたしの薄い背中にちいさな電気うなぎが泳ぐようになる。わたしはとても感じやすいたちで、すぐに声をだしてしまう。もちろんマッサージを施してくれるほうは何も言わないけれど。
マッサージをうけている最中、身体がほぐれて、それは例えば刺繍糸のたばが一本ずつになっていくような感じ、最後のほうにはからだがぜんぶどこかにいってしまったようになる。それはとても心地のよい気分で、たしかにここにありながら、何にも縛られていない。わたしはそのときなにかをする必要がない、そんな心持ち。

普段触れられるなら、男の子のほうがだんぜん好みだけど、マッサージのときには女の人に頼むことが多い。女性のほうが、なんとなく力強い気がするから。

マッサージの最中には、あんなに手放してしまった身体、終わって起こすとまるでほんとうじゃないみたいにぴたっとしている。身体がきちんと身体のかたちをしているというか。わたしがただしくわたしのかたちをしていると感じる。いつも、ひとの手によってだけその感覚がもたさらされる。



散文(批評随筆小説等) 身体のこと Copyright はるな 2010-08-14 23:53:40
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