とかげ —鳥獣虫魚より—
非在の虹

焼けた石の上を滑らかにすべる水銀
光ったかと見えてそこにはない
それは一匹のとかげ
生き物であることを頑なに拒否する

草むらに放られたまま忘れられたナイフ
発見からまぬがれる殺人事件の凶器
それは一匹のとかげ
自らを人殺しの道具として疑わない

このきめ細やかな爬虫類が歌うことはない
歌えないのではない
信じたものに歌はいらないのだ

生物の汚名をしりぞけ
金属の栄光を生きるとかげは
腐食しないように日向に現れ日向から去る


       2004年初稿 2007年弐稿 2010年参稿


自由詩 とかげ —鳥獣虫魚より— Copyright 非在の虹 2010-08-12 00:59:40縦
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