口永良部島本村港
アマメ庵


午前10時30分
一日に一便きりのフェリーが入港する
家々から 軽トラで トラクターで 人々が集まる
友人を見送る人々
来客を迎える人々
俄かに活気点いた港
ぼくは 人々をフォークリフトで掻き分ける

舟が去ると
人々も四散する
誰もいなくなった港
紺碧の海に まっすぐ伸びたコンクリート
テトラポットの間から 飛沫が舞う
アマメが逃げ廻る
ぼく一人 残されたコンテナーを並べて行く

台風4号接近
本日欠航
穏やかな海は姿を消し
灰色の波がコオコオと打ち付ける
皆閉じこもって 島から人影が失せる
商店には 買うべき品物がない
ただじっと 青空が戻るのを待つほかなし

島を離れた入道雲が 夕焼けを浴びて紅く染まる
交通安全の旗がばたばた煩い
迷子の発泡スチロールが 行ったり来たりする
防波堤に昇る
胡坐をかく
発泡酒を呑む
空が 藍色に変わるのを見届ける
そうして 日が暮れる


散文(批評随筆小説等) 口永良部島本村港 Copyright アマメ庵 2010-08-11 12:33:44
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