あなたのせいじゃない
佐々宝砂
黄色と黒の市松模様の世界で
わたしは探している
くらくらするのは気圧配置のせい
でなければ起立性低血圧のせい
あなたのせいじゃない
あなたのせいにはしない
黄色と黒の市松模様はくるくる踊る
わたしは踊っていない
踊っているのは世界のほうで
世界があんまりぎらぎらするので
何を探しているのか
すっかり忘れてしまう
探し物は黄色でも黒でもなくて
青い何か
青い何かがあれば
きっと取り戻せる
取り戻せると思いながら
何を取り戻すのかもう忘れている
耳が糸で縫い閉じられてゆく
口はぽかんと開けたかたちに固定される
そして目を思いきり見開いても
世界はやはり
黄色と黒の市松模様
しゃがみこんでしまえば
それで世界はふつうに見えるのだろうけれど
あえて立ちつくしている
黄色と黒の市松模様に
わたしが取り込まれないのはなぜだろう
なぜだろうと呟きながら