夜光雲
相馬四弦
遠い明日と宇宙との境界面に浮かぶ
あの雲の中へ
右耳が千切れて 泥まみれになった
ウサギのぬいぐるみを引き摺って
彼女は夏の夜空に破壊されながら走る
腰丈にまで伸びた夏草をかきわけ
オケラの鳴き声が 辺りの紺碧を冷やして
素足はほんわりとした地熱を叩き潰し
崖下から吹き上がってくる潮風が
大陸を飛び出した彼女の笑い声
そのささやかな重力を奪ってゆく
あの真空に輝く雲に
届けばいいと思うの
自由詩
夜光雲
Copyright
相馬四弦
2010-08-09 16:50:20