夜の虹
たもつ

 
 
夜汽車が乾いた舌を出して
すべての生き物の上を
通過していく
右手にいる花崗岩の軟体動物が
左手に移りたがっているのに
左手はまだ
公園の砂場で遊んでまま帰ってこない
雨上がりの夜空に
うっすらと虹がかかっている
消える前に願い事をすると
叶うと言われているけれど
そのためにはきっと
誰かの何かが失われるのだろう
出口を探せなかった甲虫が
冷たい銀行の床の隅で
亡骸にのみ許された沈黙を保ち続けている
もしかしたら既にその遺伝子は
柔らかい土の中で
卵となっているのかもしれない
メガネをかけている人を
ひとり思い浮かべてください
と言われる度に
違う人を思い浮かべてしまう癖が
今でもまだぬけない
 
 


自由詩 夜の虹 Copyright たもつ 2010-08-08 15:03:19
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