なつゆめ
ゆえづ

赤はキャンバスでひび割れて
浴室はまっ逆さまに抜けた青
蛇口ひねれば
夏の匂いがつんと刺す

流れだしそうなタイルの上
わたしたちは
今にもぱちんと弾けて滲む熱

気泡ざわめくソーダ水
グラスに注げば
夜の泣き虫が合唱する

なつゆめの
窓格子ひっ掻いて白ちりばめた
あまのがわ
くらげの風鈴たゆとうとき


ずんずん ずん

忘れたうたに少女を孕み
こぼれる蕾たち
まさらな肌へ
ひとしずくの太陽をすべらせ

朝が突き上げる

あかい鼓動を叩っつけ
球根は爆発する


青冴えわたる
午前5時
あめあがり水たまりの虹
剥がれ落ちるうた跳ねあげて
駆けるあなたは初夏の風

バスタブはまだ泡のあくび




わらうわらう
ゆらゆら青すぎたアクリルの陽炎


自由詩 なつゆめ Copyright ゆえづ 2010-08-08 08:58:23
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