夏 極
塔野夏子

そして今年もまた夏が此の世を
残酷に覆い尽くしてゆく
夏は光と影の鋭いやいば
其処彼処抉り取ってゆくから
見渡す景色は狂おしいほど彫り深くなり
抉られた処から噴き出すように
強い色の花々が咲く
見あげる空も強い青で
其処を幾つもの透明な髑髏しゃれこうべ
列をなし横切ってゆく

夏よ
刃でありながら
巨きな傷であり痛みである季節よ

ああ
髑髏たちの横切る空へと
数知れぬ陽炎の塔が 揺らめき聳え立ってゆく






自由詩 夏 極 Copyright 塔野夏子 2010-08-07 22:37:58
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