ゆるやかに
榊 慧

緑色の液体に浸かっている。透明のような気もする。濁っているような気もする。深い。着衣のままだ。出たいと思ってすぐに消えてこのまま背泳ぎしたらどんなもんだろうかと少し背中を反らせて足を浮かす。そして俺は背泳ぎを続ける。…こういう夢を繰り返し見るのだ。俺はただもういろいろなことを省いて死にたいと思った。省いて、略して、そのまま死んでしまえればいいのだ。逃げることができるというのは幸せなことで大変に楽なことで、逃げることができない人で且つ耐えられなくなった人、/死/。




教室に入る。あいさつ。もうしゃべるの嫌だ。話すの嫌だ。このまま完結して俺が留まれるならもうどうでもいい。…いくら文章ですべてを終えたいと思ってもそうはいかない。…こっち側だけで聞こえないように呟いてから二回ほどの深呼吸。しゃべる。話す。/彼ら彼女らがどういう人間だって彼は彼で彼女は彼女だ。/俺には関係ない。/そう思ってやりすごす人の多さに俺はどこに立ってればいいんだとか、いろいろ巡って気持ち悪くなる。カッターナイフマットなんかによくあるあの緑色に似た色をした何か、が、ぐるぐる俺の周りを回って巻いているみたい、指も動かせない、硬直とは違う気もするけど、動かそうと思ったら動かせるっていう意識と動かそうともしない意識、動かさない意識、「死ね」っていう伝達の意識。




回想。


俺も人を殺してみたら変わるものなのだろうかとか考えてやめる。いろいろ考えてはやめる。あああうるさい黙れって、言いたい。言わないのは俺が健全だから。すべてのことは「健全」でゼロになったかのようになりゼロになる、熱い、冷たい、熱い、冷たい、熱い………ゼロ。




/人間みたく汗ばむ人間な俺の額。太ももをつまむ。痛い。
右腕を掻いたあとがサーモンピンクのまま、まだのこっている。トイレ行こう。




人間関係の苦手な未熟者、となるのだろうかと。一人で完結していられたらいいけどそうはいかないのでいろいろと自分の身の振り方やらなんやら、「どう思われているのか」。多少なりともこれを考えなければいやな感情を抱かせるだけになる。それを自覚しなければいけない俺は割と下等だとも思っている。そんなもんだろう。先を見る気がない自分に気付いて、漠然と不安になったりする。そんなもんだろう、そんなもんだろう、せめて何かに執着して没頭したい。できるような人になれたなら。荒んでる。色々呆れて色々呆れさしている、誰も気付かないということが怖いのかもしれない。俺が気付けないことが怖いのかもしれない。……またゼロになる。


何に違和感を感じているのか/自問自答/それが分かれば半分済んだようなもんですよ。


散文(批評随筆小説等) ゆるやかに Copyright 榊 慧 2010-08-06 23:01:33
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