砂の塔
月乃助

空色から生まれた風が、
少しの遠回りをして やってきて
季節の話をしてくれる

静寂に波打つ風紋の砂の褥

焼けた肌は、夏を貧欲にむさぼり
求めるそれを手にするまで けして 止めようとしない

いたずらに耳朶をなでる 邪心のない潮風の子守唄

眠りつく赤子の至福の顔に
つかの間させられる

うつろいに軽さを増した体でよこたわりながら
塩の柱になることも許されず
現われた大きな砂の塔に眠れば
帰られる場所などないのだから
切なく 欺くように 我が身を捨て去り
赤裸々な陽光に身を任せる

風は止むことをしらず、

風化し 砂に同化し
いつか海鳥がやってきて、そこにあしあとを残そうとも、

私は、揺らめきながら 消え去り
夢さえみるのも忘れて 微粒の夏の砂となって
小さな声を 少しばかり
たてている







自由詩 砂の塔 Copyright 月乃助 2010-08-06 07:28:50
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