ノート(こがね・ふくらみ)
木立 悟



窓のふくらみの目がひらき
風をゆっくりと見わたしてゆく
どこからか来る黄金の音
越えてきた土の混じる音



目には青空と野が映り
どちらも南にかしいでいる
煙る碧と子らの手首
草よりもゆるやかにそよいでいる



ふくらみはやがて風を追い
外へ外へと流れ出てゆく
灰の光に狭まる虹彩
世界を細くつかみとる



午後と黄金の音は降り
目はゆっくりとふせてゆく
ふくらみはふくらみ 陽の色にひろがり
子らは手のひらを野にかざす



大きな息が流れたあとで
世界は浅く凪いでゆく
音も色も遠去かり
ひとつの道になってゆく



ふくらみは窓に寄りそって
もう一度小さく目をひらき
まぶしさのにおい まぶしさの音
黄金色の手にまばたいている






自由詩 ノート(こがね・ふくらみ) Copyright 木立 悟 2004-10-15 14:09:41
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
ノート