ノート(こがね・ふくらみ)
木立 悟
窓のふくらみの目がひらき
風をゆっくりと見わたしてゆく
どこからか来る黄金の音
越えてきた土の混じる音
目には青空と野が映り
どちらも南にかしいでいる
煙る碧と子らの手首
草よりもゆるやかにそよいでいる
ふくらみはやがて風を追い
外へ外へと流れ出てゆく
灰の光に狭まる虹彩
世界を細くつかみとる
午後と黄金の音は降り
目はゆっくりとふせてゆく
ふくらみはふくらみ 陽の色にひろがり
子らは手のひらを野にかざす
大きな息が流れたあとで
世界は浅く凪いでゆく
音も色も遠去かり
ひとつの道になってゆく
ふくらみは窓に寄りそって
もう一度小さく目をひらき
まぶしさのにおい まぶしさの音
黄金色の手にまばたいている
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