わたしと せめて
乾 加津也

せめて はいさぎよい
悔いにのみこまれてもその上に震えたつ
涙もかれた花のいろをしている

せめて はもとめない
とうめいになったからだで小さなものたちを拾う
どんなにこぼれても心のありかを失わない

せめて はみなぎるちから
たましいって何ってきかれるところ
さざなみのように かならずおしよせる期待

いくつかの泥をかぶって不幸せそうな顔をしていても
せめて といえる日をもとめて
わたしはいまもじぶんだけのことばをさがしている

だが探しつづけてわかる
せめてがのびやかな 羽化をもとめるということ
意志は声をもつのだろうか
それともわたしか


◇ ◇ ◇


散歩にでる
あせりでできたたいせつな闇を抱えていた
雨にうたせてもよいものかまよっていた
だれかとのすれ違いざま
覗きこまれるのが怖くなって
あわててポケットの奥におしこんだ






(緑川 ぴの さんの作品にインスパイアされて)


自由詩 わたしと せめて Copyright 乾 加津也 2010-08-05 17:51:02
notebook Home 戻る