水風船をぶつけて
西日 茜

私の病気は、軽い記憶障害です。とても嫌な記憶ほど、あっという間に忘れます。
今まで、嫌なことがありすぎて、脳の機能が削除を優先しているのかもしれません。
たとえば、記憶というものが、一枚の写真ならば、シュレッターでバラバラにして、復元不可能にしているのでしょう。
そして、一歩あるくと、もう次のことに熱中してしまうので、主人からはニワトリだと言われています。
そんなとき、主人は餌を撒いて、
「とーとっとっと」
と、私をおびき寄せてくれます。
自分のことも、なんだか意識が薄くて、いろいろカテゴリに納めないと忘れてしまいます。
私はAB型さそり座で左利きです。AB型は極端な緻密さが特徴だそうですが、左利きは右脳が発達しやすく、緻密さと情緒がちょうどバランス取れているので、とても良い人間です。
ほどよくお人よしで、ほどよくクールなので、女としては生きやすいです。
ただ、気を付けないといけないことがあります。飲酒です。
飲酒は、バラバラになった私の記憶をくっつけてしまうので、とたんに、ビューンと飛んでく別人28号になって、夜空を飛びまわってしまいます。
そりゃもう楽しくて、後から皆も飛んできて、夜空は別人たちがビュンビュン飛び回って、
「地上の人間はデクノボーだね」
と、叫びながら勘の悪い人間に水風船をぶつけて飛び回ります。公務員として許せない人々、特にいじめの温床を作っているような人々には、思い切りぶつけてやります。
水風船は、ぐちゃっと潰れて、いじめの温床はびっくりして倒れ、びちょびちょに濡れて、二度といじめをしないように、ヘッドロックをかけたら、ポカポカ叩いてこらしめてやります。
これが、私のやくめです。しかし、一晩経つと、みんな忘れ(ることにし)ています。微力ながら、地道に闘っている私をこれからも応援してください。


自由詩 水風船をぶつけて Copyright 西日 茜 2010-08-05 15:57:45
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