カタツムリの窓
海里

街に出ると
街に溢れているひとびとが
数で私に問いかけてきます
あなたは誰に会いたいの

図書館に行くと
きちきち並べられている本たちが
さらに無言でたたみかけて来ます
あなたは何が読みたいの

お店で売られている
いろいろな服や物や食べ物や飲み物や
くるくると動いている
電車や車や時計の針たちに

あなたは
あなたは
あなたはと迫られて

迫られても
わたし
一々答えたくないので

そんな風に沢山じゃないものとだけ
ことばを交わします
ことばじゃなくて挨拶ですが

やぁ、咲いてるねと
やぁ、月を浮かべているねと
猫にはにゃぁと
犬にはわんと


「砂漠の中の砂時計」より。


自由詩 カタツムリの窓 Copyright 海里 2010-08-04 22:32:33
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