いつかデブリ
within

私のたよりない内臓は世間を知らない
私は私じゃない、他人だ
孤立電子対のように
掴めない雲のような存在の私

あなたの代わり、代わりなんていないのよ
いなかった、あなたは唯一、やっとわかったのよ
あなたは唯一、代わりなんていないのよ

交わらず折れ曲がる階を
何層にもわたって歩き続ける
時折、重厚な金属の建築物のような姿を現すが
それにはまるで質量がない

巨大な筒状の用水路を抜けると
野原がひらけ
草原が雨を纏っていた
されこうべがピアノを弾き始めると
音階が歌い始めた

「出ますわよ
 出ますわよ
 あなたの管から出ますわよ」

白身の向こう
黄身の中に
あなたがうずくまっている
その扉をミユビゲラがノックする

「神様は鏡の向こうにいて
 永遠に触れ合うことは
 できないの」

蝉が鳴かなくなった

重力が重力にのしかかる
引力が引力に引かれる
斥力に斥けられ
私は一人、呼吸困難に陥る

キッチンで母が卵を割ると
私もあなたも器に流れ出る
口の中で咀嚼された私たちは
新たな形となって生まれ変わる
世間も知らずに世界を渡ってゆく


自由詩 いつかデブリ Copyright within 2010-08-03 15:43:18
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