うっせみ
日雇いくん◆hiyatQ6h0c


 すごく。
 暑い。
 図書館にでも行こう。
 で、外に出た。
「あーはやくエアコン欲しいなあ」
 おれの家には。
 扇風機しかなかった。
 貧乏なので。
 まあ仕方がない。
 もっとも図書館までは近い。
 歩いて20分くらいだ。
 だからまあ恵まれている方ではある。
 5分くらい歩いた。
 木の多い通りに出た。
 小さな林もあった。
 蝉がこれでもかというくらい。
 死ぬほど鳴いていた。
 道には空蝉が。
 これも大量に落ちていた。
「掃除くらいしとけよな、あーキモい」
 そう言いつつ。
 避けながら歩いていると。
 背後に変な気配がした。
 見るとその空蝉が。
 大量に空中に浮いて。
 人の形になっていた。
「これがまさに空蝉ってか、って言ってる場合じゃねえなこりゃ」
 慌てて走り出した。
 合わせて空蝉の大群が追っかけてきた。
「なんだよーついてくるんじゃねー!」
 図書館のことなどすっかり忘れた。
 死に物狂いで走った。
 だが大群はしつこく。
 いつまでも追いかけてきた。
 ものすごいスピードだった。
「うわーもうだめだー走れねー」
 叫ぶと同時に。
 その場に倒れた。
 すると空蝉の大群が。
 おれの周りをぐるっと囲んだ。
「うっせみー、じゃない、うっーせめー」
 狭苦しくなった。
 気を失いそうになった。
 と今度は大群が。
 おれの体を持ち上げた。
「な、なにするんだー」
 大群はおれをそのまま。
 空中へと運んだ。
 あまりのことにショックを受け。
 おれは気を失った。

 気がつくと俺は寒いところに来た。
 どこかもうわからない。
「どこだここ、うっせみー、じゃないうっさみー」
 震えつつもまわりを見た。
 すると先ほどまで。
 俺を苦しめていた大群が。
 寒さのためか。
 あたりに散らばっていた。
 おれはそいつらを集めた。
 で、持っていたライターで焼いた。
 脂分を含んでいるので。
 とてもよく燃えた。
 暖を取るにはちょうどよかった。
 腹も減ったが他に食料もなかった。
 なのでそいつらを焼いて食った。
 意外なほどうまかった。
 おれはつい叫んだ。
「うっせみー、じゃない、うっうめー」

♪うっせみうっせみ 
 うっうせみせみ
 うっせみうっせみ 
 うっうせみせみ
 うっうせみせみー 
 うっうー

♪う



散文(批評随筆小説等) うっせみ Copyright 日雇いくん◆hiyatQ6h0c 2010-08-02 00:00:40
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