日曜日19時の女
はだいろ
転職したいと考える。
あまりにも、職場のにんげんどもが、くだらないから。
もういやだ。と思う。
だけど、もちろん、冷静にもなる。
サラリーマンなんて、だれでも、どこでも、似たようなものだ。
くだらない人間関係にただ、
がまんして、
すみません、すみません、とやり過ごすだけで、
その報酬として、一ヶ月に一回、
一ヶ月暮らせるくらいの、
給料をもらっているのだ。
生き生きと生きたいって、そりゃ、思うよ、
ぼくだって、若者よ。
なにも、いくつになったって、
なにかを、あきらめればいいってものじゃない。
生きていくっていうことは、
自分のなかの、死んでいくなにものかを、
食い止めることだ。
っていう、昔のドラマの台詞もあった。
早くやめたいって思う。
55歳でやめるにしたって、
あと15年もがまんしなければいけない。
しかも、ぼくは独身だから、
もし結婚したり子供ができたりしたら、
まあ、もしもの話だけれど、
そしたら、
65歳まで働かなければならないかもしれない。
いったい、
いつになったら自由になれるのだろう。
自由っていうのは、ひとりってことなんだろうか。
買ったこともない宝くじも買ってみる。
3億円当たったら、
もちろん、仕事はすぐにやめる。
後のことなんか知ったこっちゃない。
そして、なんの変わりもなく、物事はつづいていくだろう。
だったら、
ぼくの仕事なんて、いったいなんだっていうんだろう。
月曜日から金曜日までの超勤代をかき集めれば、
日曜日に安い女の子ひとりくらいは買える。
19時に呼んだ女の子は、
でも、黒い爪の赤い髪のブスだった。
しかもひどい鮫肌で、
コスプレの制服がなければ、
抱きしめるのも一苦労だった。
そうは言っても楽しくしたいから、
ひたすら乳首を舐めさせてたら、
意外なほどの快感がやってきた。
あとは、
彼氏と彼女ごっこをしようと言って、
いちゃいちゃした。
それなりに楽しかったけれど、
それは大方、ぼくの努力によるものだった。
人生、
そんなものだ。
自然に楽しくならないのなら、
努力すれば、楽しくもできる。
そうしてまた、月曜日がやってくる。
しがない、サラリーマンの、
地下鉄のゆきさき。
くだらない、
灰色の毎日。
でもまだ、魂は死滅していない。
どうしてそう信じられるかって、それは、
こんなくるしみこそが、その証拠だからだ。
来週はまた、
ちょっと高いお店の女の子を呼んでみよう。
ほんとうにきれいなおまんこは、
魂のように輝いている。