レンラクコウ
佐藤真夏
くちばしの長く伸びた蚊に足元を見られて貧血になるくらい
過不足のないライン上を歩いているから
ワタシの内側から何かを持っていこうとしないでほしい
ダレに宛てるわけでもないけれど連絡通路をてくてく行く
遠く
春の大河を越え
夏の大三角を結ぶ星座線の先には
点滅しているナツメ電球がひとつ
朝の裏側あたりで振り子を揺らしているみたいで
ワタシは浅い眠りを繰り返している
ボタンが外れていくようにカチャカチャと鍵穴はほどかれ
記憶の薄皮は剥がれ
染みのついた地図が浮き上がる足元には
男の頭をころりと乗せた両胸の潰れ具合に安堵しているワタシがひとつ
引力に慰められている影が落ちる
ざわざわと脈打つ全身をよく開いて
熱風降り注ぐ夏の遠吠えを聞く
プラネタリウムでは白鳥が密猟され
ぽっかりあいた天頂の空白からは縮こまった朝が湧き出している
白く塗りつぶしたレプリカが幾ら押し寄せてきても
足りないものは足りないから
ダレに宛てるわけでもないけれど連絡通路をてくてく行く
ワタシは、
蒸発を待つ水のように空が近づくのを待った