光合成色素
こしごえ

しらない、でしょう
わたしのことを
ひとは「死」とよぶ
なぜかしら。
あの宇宙の闇をみ上げ
湾曲する砂浜の桜貝の
黙りこくる口から気泡を吐いて
すこしだけ雨にぬれる
夜が手放す風に透けて。
しりたいのかしら。
わらっていてもいいの。
解け出して合わさるわ。
華と華とが接吻をする。
放射状に弧を描く葬列。
重ねて申し上げますが、出会ってしまったの

これが愛だとさよならすれば。

わたしが孕んだ星星は、
あちらで
夕凪にひとしれず洗われ
岸辺をあるく
しろがねのはなうた。
空になった鳥籠が朝日を反射して
(この死もあなたとは無縁ではない)
あの華をみつめつづけると
底なしのしずけさが
眼球内に飽和しますでしょ?
水晶体にみずからの亡霊がとおり風に映り。
飛び去ることの出来なかった翼を
裏庭にうめて大きなおはじきの
硝子の墓標はしんめりと
光沢を放つ
無口なひとすじの雲は
わたしをとらえてはなさない。
いつかなくしたわたしの
光芒の原に
あわの、宙で弾ける星のうた




自由詩 光合成色素 Copyright こしごえ 2010-08-01 08:08:29
notebook Home