回転扉
乾 加津也

ゆっくり
ゆっくり廻ってはいるが
いくつもの次元を孕んでは吐く

ぷいと吐かれたものたちは
孕んだ種子をふりかえってみるが
そのうしろでひろがる樹海にたちすくむ
透明なスプーンのようにへこたれる

換気口のリズムがつめたい秩序となって
わたしのこめかみになんども杭をうちつけるので
どこかに倦怠をのこしたまま朝起きて着がえる
くれば
回転扉は空の青だけボイドしたまま
雲の白さをもてあそんでいる
わたしのように
孕まれるものたちは無邪気に子宮入りして
目を退化させたままデスクについた
昼になるまで
壁かけ時計の裏がわの回転扉に見守られながら
ひざをかかえた胎児のように働くのだ

軸は太いほど
潤滑油でべとべとになる

その日も
回転扉はべとべとしながらゆっくりと廻っていた
向こうにみえる外の景色がどんなにあかるく華やかでも
いちど吐きだされれば やはり
わたしは孕まれたことをくやむのだろう

こめかみにてをあてて入った
ゆっくりと右に動くようにいわれる
あらがう瞳孔にうすいまぶたをかぶせて
わたしは今日もしずかに産まれた


自由詩 回転扉 Copyright 乾 加津也 2010-07-31 13:19:43
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