セミ
ベンジャミン

ミンミンと鳴くこともなく
たまたま出会ったセミは
コンクリートの駐車場に
ただ しがみついていた
生きているのか死んでいるのか
さわったら ジ っと鳴いた
逃げることもしないので
ひどく弱っているのだろうと
近くの木の枝にのせようとしたら
まるで重さを感じないくらいだった
やっぱり つかまることもできずに
そのまま落ちてしまった
落ちたときに ジ っと鳴いた
どうして よりによって僕の前に
お前はあらわれたんだと思った
いったい僕に何ができるっていうんだ
動かないセミをつかんだら
やっぱり ジ っと鳴いた
飛ぶこともできずに
もはや そのときを待つだけのセミ
できるだけ高いところへ
セミをつかんだ手を伸ばした
セミは
ジ っと鳴いた
ジ っと鳴いて
やっぱりもう 動かなかった


自由詩 セミ Copyright ベンジャミン 2010-07-31 00:11:57
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