金魚の餌
たもつ

 
 
街を歩いていると
工事現場で父が働いているのを見つけた
道具のようなものを使って
ものを壊したり、穴を掘ったりしていた
父は大きな会社の重役をしているはずで
今朝もビシッと高級スーツを着こなし出勤して行った
僕は見てはいけないものを見てしまった気がして
知らない振りをしてそのまま通り過ぎようとしたけれど
逆に父に見つかり声をかけられた
たとえ重役とはいえ現場に熟知していなければいけないのだ
そう言うと作業着を脱ぎ
ビシッと高級スーツを着こなし
どこからかやってきた運転手付きの黒いリムジンに乗って
どこかに行ってしまった
一方、僕はといえばその後
猛暑日のアスファルトの上を約三キロ近く歩き
金魚の餌を買いに行った
帰りは帰りで段差につまづき転んで
膝を擦り剥いたのだった
 
 


自由詩 金魚の餌 Copyright たもつ 2010-07-28 23:37:21
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