飛べない鳥、飛びたい兎
itukamitaniji

飛べない鳥、飛びたい兎

もう何度目の空だろう 僕は急に飛べなくなって
長い間ここで空を見上げていた
もう何度目の涙だろう 空を飛ぶのが鳥ならば
今の僕はどんな名前なんだろう

ある時おかしな兎に出会った 高い高い空に向かって
何度も何度も跳びはねていた
掲げた手を思い切り 伸ばして何かを掴もうと
だけども何度もその手は空を切るだけ

鳥さん 鳥さん 飛び方を教えてよ
綺麗な空を 何処までも飛んでみたいんだ
兎さん 兎さん 飛び方は忘れたんだよ
僕が飛べないんだから 君にはもっと無理だよ


そう何度忠告しただろう 君には無理だって
だけど兎は長い耳を閉じて
まるで聞いていないみたい 手をばたつかせて
懲りずに何度も跳びはねているだけ

もう何度目の夜だろう 僕には無理だって
ある時兎はついに諦めて
もう何度目の空だろう じっと夜空を見上げた
赤い瞳に流れ星が映った

鳥さん 鳥さん 分かったような気がする
僕は到底飛べないけど それで構わないんだね
それはきっと 僕に相応しい生き方じゃないんだ

兎さん 兎さん 分かったような気がする
僕は飛べなくなったけど 悲しんでばっかりじゃ駄目なんだ
今の僕が これが僕なんだと認めなくちゃ


自由詩 飛べない鳥、飛びたい兎 Copyright itukamitaniji 2010-07-28 21:13:04
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