雨の残りもの
真島正人
6月の雨が
まだどこかに残っていて
それが7月の終わりになっても
降り注いでいる
一月以上寝かせたからだろう
いらないものがたくさん混じってる
人間の気持ちに置き換えたら
それは怒り
悲しみ
ぐずつき
喜び
ねたみ
いいや
そんなのでは表現できないね
なんとなく不安が
よみがえってきて
君のそばでは猫が
眠っていて
すべてはこんなにも単純なんだって
歌っている
寝言で
昨日バスに乗ったとき
読みかけの本をカバンに入れるのを
忘れていて
しまったなと思った
窓ガラスから見える景色は
文字よりも晴れ渡って
濁っていて
潔癖症の僕は
苦しくなってきたんだ
なんとなく不安が
よみがえってきて
かなえられなかった
古い願いが
まだここで足踏みしてるような
気がする
深夜はまるで
音のない特急列車さ
すごいスピードで僕たちを
連れ去る
かたちも影もないのに
確かにそこにあり
埋立地
地方放送局
湾岸の寂しい光景などを
連想させる
記憶は
果たして質量を持ち
燃料として
成り立つだろうか?
6月の雨が
まだどこかに残っていて
それが7月の終わりになっても
降り注いでいる
僕の知っている
いろんな景色が
雨に濡れたり濡れなかったりする
同じものの違うヴァージョンはいつも
人に錯覚を見せる
僕はそれを
並べたものに戸惑い
意味を探してしまうよ