俺の探検
日雇いくん◆hiyatQ6h0c


 俺はもてない。
 だから女と付き合った事がない。
 草食系とか異世界の話だ。
 それどころか男ばかりの学校しか行かなかったので話もしたことがない。
 女との縁は通学の際にすれ違ったりする時だけだった。
 その時だけは至福だった。
 高校を出ると近所の工場で働くようになった。
 そこも男しかいなかった。
 無性に女が欲しい。
 そう思い続けながらしばらく働いた。
 しかし女と縁ができる事はなかった。
 いっそのこと母親とでもいいからつきあってみようか。
 あまりに縁がないので夜寝る前になるとそう考えた。
 だが朝に母親の寝起き顔を見るとその気はうせた。
 給料が入ると風俗でもいいから接してみようかと毎月思った。
 しかし怖くてそこから一歩前に出ることが出来なかった。
 結局金は毎月生活費とAVエロ小説エロマンガに消えた。
 そうこうしているうちに年月が過ぎた。
 気がつくと三十まであと数年というところまできた。
 どうしたらいいんだどうしたら……。
 俺はこのまま朽ち果て死んでいくのか……。
 気が狂いそうだった。

 そんな時だった。
 一本の電話がかかってきた。
 出ると高校時代の同級生だった。
 山本という男だった。
 クラスメイトだったが話をした事はなかった。
 まったく普通の目立たない男だった。
 そんな男がなぜ俺に電話をかけてきたのだろう。
 とりあえず会いたいというので約束して待ち合わせた。
 仕事以外は女もいないのでどうせ暇だ。
 なつかしくて会うだけだ。
 もし何かを売りつけられたら断ればいい。
 どうせたいした金はないのだから。
 会うとなぜか女を一人連れてきた。
 見たこともない女だった。
 歳は20代の中ごろに見える。
 テレビで見るようなこぎれいな若奥さんといった感じだった。
 俺は山本に感謝した。
 女と話せることがあるだなんて!
 夢のようだった。
 よし多少のものだったら買ってやる。
 そう喜びさっそく待ち合わせ場所の近くのファミレスに行った。
 とりあえず世間話をしていると山本が女を紹介した。
 女はやつの奥さんだった。
 何かの才能があるわけでもない。
 そんな男がどうしてこんなこぎれいな女と結婚できたのか。
 うらやましくて死にそうになった。
 俺はさっそく訊いてみた。
「どうやって知り合ったの?」
「ああその事なんだけど……」
 山本が切り出すと突然、奥さんが話し出した。
「実は、今日お会いしたのは、あなたにすばらしい話をしたかったからなんです……」
 宗教の話だった。
 二人は宗教を通じて知り合い結婚したということだった。
 聞いた事もないような名前の、いわゆる新興宗教だった。
 そう言えばネットでこういう風に呼び出される話を読んだことがあったな。
 俺は思い出しながらしばらく話を聞いていた。
 多少がっかりはした。
 だが仮にもこぎれいな女が俺に話をしてくれる。
 そう思うと俺は満足だった。
 聞きながらふと思った。
 もしかして俺もこの山本たちがすすめる宗教とやらに入ったら。
 女に縁が出来るかもしれない。
 どうせろくな人生じゃない。
 俺にも女が出来るのならやってみようか。
 俺はその宗教とやらに入ることにした。
 俺の探検はこうしてはじまった。

 次の日曜日俺は宗教の集まりに参加した。
 えらい先生とかいう人の講話をビデオで見る。
 その話について語り合うというものだった。
 話についてはまったく信じられなかった。
 だが集まりには女がたくさんいた。
 俺は女が欲しかった。
 さもまじめに信じているようにしていれば。
 きっとここにいる女の一人くらいついてくるかもしれない。
 そう思った俺はさも信じているかのように振舞った。
 普段工場でも生きていくため似たようなことをしている。
 そのくらいは慣れたものだ。
 とたん俺はたちまちみんなの尊敬を受けることになった。
 数ヶ月が過ぎた頃にはもうご立派な信者になっていた。
 
 するとある日一人の女が俺に声をかけてきた。
「私もあなたのような立派な人になりたいです。二人っきりでお話しませんか?」
 俺はさっそくファミレスに行った。
 女は背も高くなく小太りでどちらかというと美人ではなかった。
 しかし目がどことなく潤んでてエロかった。
 やれるかもしれない。
 女ならなんでもよかった。
 俺は店に入るとこれでもかというくらい先生とやらを褒めたたえた。
 女はうっとり俺を見ているだけだった。
 話し込んでいると夜になった。
 店から出るともう女は俺に寄り添ったままだった。
 帰ろうと駅まで行くと女が言った。
「今日は帰りたくない……」
 俺は適当にタクシーを拾い適当なホテルに入った。
 部屋に入ると女が乱れはじめた。
「いや。そんなつもりで来たんじゃない」
 言いながら勝手に服を脱いでいった。
「いや。そんなつもりで来たんじゃない」
 言いながら一緒にシャワー室に入った。
「いや。そんなつもりで来たんじゃない」
 言いながら一緒にベッドにもぐりこんだ。
「いや。そんなつもりで来たんじゃない」
 言いながら股を開き目的地を手で開いた(クパァ)。
 俺が、ついに女とやれる。
 そう思うと後の事はどうでもよかった。
 思い切ってリードされるまま入れた。
 ああ。
 吸い付くような感触がたまらなかった。
 俺は好きなAV女優を女の顔に重ね男優になりきって動いた。
 とても気持ちよかったがオナニーしすぎでなかなかいかない。
 それがよかった。
 女は感じやすい体質だった。
 ものの2分もしないうちにいった。
 いくとすぐに次を要求した。
 再び入れるとまたすぐにいった。
 すぐに次を要求した。
 再び入れるとまたすぐにいった。
 すぐに次を要求した。
 再び入れるとまたすぐにいった。
 すぐに次を要求した。
 再び入れるとまたすぐにいった。
 すぐに次を要求した。
 再び入れるとまたすぐにいった。
 そしてやっと俺もいくことが出来た。
 終わったあとふと見ると女の股が俺の型をとっていた。

 こうして俺は女を手に入れることに成功した。
 だが一回経験すると欲が出る。
 もっといろんな女とやりたくなった。
 しかも女が結婚結婚と言い出すようになった。
 信じていないのでお義理の宗教活動も面倒になった。
 思い切ってある日集会でえらい先生とやらをひどく罵倒した。
 するとすぐにどちらとも縁を切ることが出来た。
 女もショックで活動をやめた。
 そしてまた以前の暮らしに戻った。
 平和になったがしばらくするとまた女が欲しくなった。
 もともともてない男だ。
 手がかりは一つしかなかった。
 俺は山本に電話した。
「山本、俺は間違っていたよ……」
 
 そして俺はまたお義理の宗教活動を始めた。
 また面倒になったら今度は他の宗教にも手をだすつもりだ。
 俺の探検はまだまだ続く。

初出時より一部改稿*1





散文(批評随筆小説等) 俺の探検 Copyright 日雇いくん◆hiyatQ6h0c 2010-07-23 23:30:06
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