パラボラアンテナ
たもつ
もうすっかり真夏だというのに
町内を一匹の羊が歩いていた
川を探しているようだった
取り壊しが決まって無人となった団地が
フェンスと草むらの中に
数棟納まっている
淋しい幼少期を過ごした人も
何人か住んでいたのだと思う
頭の上に広がっている場所が
空だと知ってしまったときから
僕は少しずつどこかが
減り続けている
やがてすべてがなくなる
そしてそれは例外などではない
一階のベランダに
パラボラアンテナが置き去りにされている
羊が欲しそうな顔をして見ていたので
持ち帰っても誰も怒らないよ
と言うと、嬉しそうに
敷地に入れる場所を探しに
角を曲がった