【連詩】 半身
古月
夕涼みに
かげふみをする
耳元に低く
音楽が流れていく
横切ってゆく鳥は
背中から胸への
青い輝石
角
のことだけを秘密にして
七時に
会いたい、かげふみの背中
を
めくる鬼
するするとのびていく影法師のさき
佇むあの子は
誰
かしら、
カッコウの羽根ト=音記号の空白に躑躅、
に咲き、指先と降り立った影とふ、身(み)
この身とて 浮世に宿る仮の舟
カッコウは 山々にこだまして
行き先のない短調の調べに 嘆く花々
かげをさわる
少し紅に染まった指に
つたわる日の温度
滑空する曲線に、沿って
音階が
抜け落ちていく先に
にじんで、にじんで、
(口だけを)動かして
(余韻)
いない、
と言ってみる
誰かの声が塞がった
後にはまた、
繰り返し流れ言う
いない、
音階はながれ (るる、)
ない、
い (る、)
ない、
(る、)
いない、
いなくな、る、律音
に、羽根は肌を離れている (静寂)
それ、にさわる
たましいのけがれのそこで
なおひかる あか、みどり、それから
眼窩のかたさ 手ざわり、の
角
極彩色、の、
あのこ、は、わたし
、の、影絵、影絵、影絵、
ぐるぐる回る走馬燈
めくられた背中を貼りなおす
鬼はもう、いない、から
出ておいで
手まねきする腕はどこまでも
追いかけてくる