火曜日の女
はだいろ
いま、帰って行った女の子は、
高級店の女の子。
いつものお店より、2倍近くも高い。
いったい、そんなお金をかけたら、
どういう女の子がくるのか、
経験として、知りたかった。
ぼくはもう、ものは欲しくない。
ものなんて、
いくら買っても、死んだら、
ものが残って、ぼくはいなくなる。
でも、
記憶や、経験や、思い出は、
ぼくだけのもの。
ぼくが消えたら、それで消える。
ぼくがいま、
欲しいものは、記憶だ。
わかちゃん(仮名)は、
高級店の看板の名に恥じぬ、美少女だった。
そりゃ、プライドの高さはあったけれど、
服を脱いで、ちいさな体に、
不釣り合いなほどの美しくたわわなおっぱい。
まっしろなくだもののように。
甘く、
傷つきやすく、
今この夜にふるえている。
ゴムないの?
わかちゃんは言った。
ぼくは、
あるよ、と言った。
正常位で、
腰を振れども、
ぼくのはいつのまにかちじこまってしまった。
言い訳をしようにも、
バイアグラは飲んでるし。
理由は、自信のなさだろう。
ぼくは、辛かった。
だって、
帰り際、あの子は言った。
きょう、
お誕生日なの。
ぼくの情けなさ、
世界一の情けなさを、誰が知ろう。
ぼくは、あの子の手で射精したけれど、
それはみじめな射精だった。
ぼくは、
雄々しく、
あの子のなかで果てなければいけなかった。
だって、、
きょうは、
あの子の、
お誕生日だったのに。
つまらないぼくの詩集を、
あの子にあげた。
もう一度、
会いたいけれど、
もう会うことは、
ないだろう。
ぼくの記憶のなかのほかでは。