現象:或る七月の夜
塔野夏子
頂点を仄青く明滅させる三角形が
部屋の片隅に居る
銀のお手玉をしながら
華奢なアルルカンが宙を歩いて過ぎる
星のいくつかが
音符に変わり また戻る
硝子瓶がひとりでに傾き
グレイの猫がこぼれ出る
結晶化した記号たちが
暗い川の橋の上に整列する
窓から窓が生まれ
その窓からまた窓が生まれ……
青緑の液状の眠りが
ベッドを音もなく波打たせている
自由詩
現象:或る七月の夜
Copyright
塔野夏子
2010-07-19 21:11:03