めぐりのうた
木立 悟








雨が光のように鳴り
つぼみの冠を流れおちる
隔て 隔てられ 近づく咽
咽の上の咽
震える糸


不安を呑み
さらに渇き
片目を閉じる
降るものは降る
降るものは降る


曇りと曇り
はざまの泡
共鳴まで至らぬ共鳴
放ちつづけ
放ちつづける


定まることのない羽が
午後の七時を南下する
響きは消える
消えた響きが
さらに 消える


碧の一音
扉のある壁
亀裂をおさえ
歩幅は鳴る
次の爪の世代まで


ちぎりつづくのは
降りつづくから
音や光やかたちではなく
ただ色であり
色であるから


臥している
五億年前でいる
水の先の水でいる
羽の生きものが
羽を差し出す


行き場も無く
骨で居る
地層の波を
越えてゆく
震えおさえる
風の指で居る


はじまりの星
青い星
聞こえない警告の
鳴り止まぬ径
水の闇の径


毛をかすめ
景はすぎる
閉じる間もなく
目水に映る
罰は罰に鳴る
罰は罰を踏む


棄てられた街
指の腹
路なぞる路
時さかのぼる
白い花


三や四に追いつけぬ無限を
幾度も見てきた
地使や水使や
終わりの銀河の
うたを聴いた


七つ数えて
倒れ臥して
毒を息して
筆は短く
夜を夜に折る


弦も譜もなく
己れしかなく
奏でではなく
たたき たたき
放ち 返し


黒のしるしや水のしるしが
金と緑にうねり渦まき
夜や夜や
夜の底まで
明るく明るく立ち上がらせる


夜は夜を呑み干して
鉛の筆から枝の影から
蠢動を水に落としつづける
水など知らぬそぶりの顔で


遠いままの朝があり
痛みを下へ下へ下げゆく
触れるだけで回る細さ
光は進む 進む進む
柱の上へ上へ到く


花のない土地をすぎ
たったひとつのひまわりをすぎ
置き物のような双つ陽の
はざまの径をすぎてゆく
小さな花冠に照らされながら
























自由詩 めぐりのうた Copyright 木立 悟 2010-07-18 16:26:02
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