狩る  時雨
砂木

強い効き目の薬を飲んで
回復しつつある風邪の喉
朝 一息つくように裏の戸を開けると
いやでも見ざるおえない
蟻が捕獲した蛇のミイラ
しっぽは食べて まだ間に合っているのか
あれから一週間にもなるのに
まだ頭から半分の胴体が巣穴からでたまま

見るな自分 吐き気がする
私も同じ食物連鎖の中にいるしかない
同情も何もいらない
食べなければ死んでしまうから
殺して食べる 生き物の基本だ
ひきづりこまれるな 弱肉強食の世界だ

わかってはいる頭でわかってはいる けど
なんで心なんかあるんだろう
油を貰う機械のように 食べる事を喜べばいいのに

蟻は 食料ができて喜んでいるだろう
蛇は 苦しんだ

もしかしたら最近の大雨で 蟻の巣は水が入って
蟻は死んだのかもしれない
底の土に殺した者も殺された者も死んで養分になったら
種が根をはり 植物がはえ
植物を食べる動物が暮らす
累々たる積まれていく景色に傷付き
意味のない歌など歌う事に勝手に傷付く
強い歌が欲しい 
食物連鎖の中 もがく事しかできなくても

生と死 それだけではなくある心のため
狩りとられる者をかざす 時のような歌が   


自由詩 狩る  時雨 Copyright 砂木 2010-07-18 16:22:53
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