ぎらり
三田九郎

眠れない

ロウソク点けて

私を溶かして

ガラスを破る猫の叫び

欲情

明日、もし晴れたら

真っ先に駆け寄って

乱暴に抱いて

溶けたロウが地面に延びて

月光

コーティングされた地球を照らす

偽りなんてないはずの君の寝顔に

ワインを少したらしてみる

口にこの手を挿入して

心臓まで伸ばして

鼓動

その証を

びりびりびり感じてたい

月がぎらりとまたたく

変色するたくらみ

限りないグレーゾーン

(どんなことも結局あいまいだ)

宇宙のチリ

芥川龍之介

君の本棚は意外ときれいで

あれもこれも並べ替えてみた

(せめてこの本棚の分だけでも、と

 私は世界を解体した)

一昨日の夜這い

静寂のおかげで

カチカチ時計が叫んでた

欲情

刻一刻と高ぶっていく

救急車のサイレン

何者かの不幸に敬礼

月がぎらりとまたたく

君の頬にワインをたらして

油断した傷跡を

秘密裏に舐めてあげる


自由詩 ぎらり Copyright 三田九郎 2010-07-18 04:08:45
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