最強装備
雨音些末
激しい息遣いで
果てたそのあと
背中を向けて
一つの国の国民の数ほどの
命の迸りを受けた
ゴムの膜を
さっとはずして
こんなんで隔てずに
お前の中に入りたいよ
君はそう言ってペットボトルから
ウーロン茶を飲む
私は全身にうっすらと汗をかいたまま
かすかに息をはずませ
額や頬に幾筋もの黒髪で
試し書きのような線を描いたまま
君の仕草や姿を見ている
ねぇ
私の中にいるとき
どんな感じがするの
私は女だから
君の中に入ることができなくて
どんな感じなのか
わからないの
君が私に挿(はい)ってきたときや
唇をふさがれたまま
激しく突き上げられる
切なさを伴った快楽なら
誰よりも知っているけれど
いつか私も
君の中に入っていけたらいいのに
君の体内にゆっくりと
私の体の一部が
君を押し広げて入ってゆく
入っていくほどに
君は眉根を寄せて
頬を紅潮させて
首を左右に振りながら
快楽の歌を歌うのだろうか
そして生まれてくることのない
命の迸りをゴムの膜に放出した後
私は
君の快楽や空虚感を知るのだろうか
でもそれは
現実的な話ではないし
考えあぐねても仕方がないことなので
私はもう一度
君にゴムの膜を
器用に装備させた
ひとつの国の人口の数ほどの
生まれてこない命の素を
受け止める
最強装備を