火は緑
木立 悟



夜の灯りに染まり連なる
紅くにじんだ雲の前に
誰もいない建物がつづいていた
記憶と 事実と 交響と
淡く静かな流れに沿って



目に映る火と
映らない火の
かすかな距離が燃えあがる
空き地に落ちた光の日々を
抱きあげては抱きあげては
燃えあがる



髪の毛の水
髪の毛の月
痛みのない痛みを握りしめたとき
響きの行方の火は緑
ゆるぎないものは既になく
くちもとに触れる指はなく
火は火とともに夜を飛ぶ
ゆうるりとあおぎ見る目のなかの
幾すじもの軌跡とともに飛ぶ





自由詩 火は緑 Copyright 木立 悟 2003-10-09 08:59:29
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