雨の音がメトロノームみたいに聞こえる
ホロウ・シカエルボク






何を言ったって駄目だぜ
お前が
どんな言葉を吐いたって
俺には
あてがわれたイデーにそって
踊っているだけの白痴にしか見えない
だらしなく開いた
唇のはしが拍車をかける
お前に俺を断罪することなど
200年経っても決して出来っこない
何もない土地に
いちから石を積みなよ
そこからやらなければ
真実などけして見えやしないさ
一生かけて塗りたくる
連続する流動的な悟りが人生ってやつだ
だから
同じ言葉が何度も何度も
違う旋律で産み落とされてくるのさ
その参道を見たことがあるか
その参道をお前は見たことがあるのか?
けして見たことはないはずさ
お前には見ることの出来る
目というものがまるでないのだ
初めから自分で
積み上げてこなかったせいさ
あてがわれたものを鵜呑みにし続けてきた
お前はただの白痴だからだ
だらしなく開いた
唇のはしが拍車をかける
素手で思いっきり引き裂いてやろうか?
お前はよく居る阿呆に過ぎないんだぜ
牙もないくせに
誰かに噛みつこうなんて考えない方がいい
守られてくることしか
覚えてこなかったくせに
お前に成し遂げられることなんて何もないのさ
ルーティンワークの末に
火葬場で骨になるのがオチだ
汚れたことのない真っ白な骨にさ
よう先生、俺を焼くときには
骨も残らないくらい執拗に焼いてくれ
真っ白な骨など残したくはない
恥ずかしい姿など曝したくない
書ける限りのものを代わりに残しておくから
俺の身体はなかったことにしておくれ
俺じゃないものを使って
俺の墓標をこしらえるのはどうかよしておくれ
何を言ったって駄目だぜ
使い方を知らない言葉なんて
それは下手な鉄砲みたいなもんだ
知ってるか
下手な鉄砲なんて
数撃ったって絶対に当たらないんだぜ
狙い方を知ってるやつじゃなければ絶対に当てることが出来ないんだ
よう先生、先生!俺を焼くときには
骨も残らないくらいに徹底的に
骨も残らないくらいに徹底的に焼いておくれよ
何も知らない恥ずかしさなんて曝したくはないんだ
それは俺の残像よりもたちの悪いものだ
俺はそんなものをわざわざ受け入れたくはないのだ
あとは最後しかない人生を
受け入れて暮らしてきたんだななんて思われたくないのさ
駄目だぜ、駄目だぜ、駄目だぜ、駄目すぎる
そんな言葉じゃどんな心にも切り込めたりなんかしない
いちから積み上げた言葉でなくっちゃあ
お前の心で積み上げた言葉でなくっちゃあさぁ
雨の音が聞こえるんだ
メトロノームみたいに聞こえるんだ
先生、せんせい、判るかい
メトロノームみたいに聞こえるんだよ、雨が、雨の音が、俺の耳には
時間には終わりがあるんだって言ってるみたいに聞こえる
俺は生きている限り
精神病院に収容されてる入院患者だ
まともさなんて自分で保証したらお終いなんだぜ、それが俺が積み上げてきたことの答えのひとつだ
俺は生きている限り精神病院に収容されてる入院患者だ、それも取り返しがつかないほど重度のイカレ具合さ
そしてそれは何よりもに勝る俺の誇りに違いないのさ先生、なあ先生、判るよな、先生
骨も残らないくらいに徹底的に焼き尽くしておくれよ
それよりも少しはマシなものを





俺はたくさんこの場所に残していくんだからさ








自由詩 雨の音がメトロノームみたいに聞こえる Copyright ホロウ・シカエルボク 2010-07-11 10:34:49
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