「言葉よ、さようなら」
ベンジャミン

言葉よ、さようなら
わたしの中に、在ったものが
まったくちがう世界へ、ゆくのです

イメージや感情や
そういった、見えないものが
見えるようになって、現れるのです

意味を持たされても
意味を伝えるためではなく
意味を広げるために、羽ばたくのです

水鳥が、水面を
ぱしゃんと叩いてゆくように
わたしの波紋はわたしから四方に散って

言葉が、白い便箋の
余白を引っ張りあげるように
わたしという巣から飛び立ってゆくのです

さようなら、言葉
今と同じようには、会えないから
また今度、というわけにはいかないのです

これっきっり、なのです
わたしを抜け出して、ひとりぼっち
どこまでも自由なところへ、帰してあげる

言葉よ、さようなら
今度会うときは、見知らぬわたし

けれど、たしかに
あなたは、わたしから生まれたことを

覚えていてくれるでしょうか
さようなら、だけでなく

わたしが与えた意味を
もう一度わたしに

教えてください


自由詩 「言葉よ、さようなら」 Copyright ベンジャミン 2010-07-11 02:16:14
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