回顧
ゆるこ


落ちて行く日だまりの言葉を書留ようと伸ばした指先に触れていた昔の私の頭皮
とてもさらさらとしていて、若草の香りが気高く流れていたから私は意識を手放さずに済んでいた


太陽が月にかじりつく頃に私たちは秘密を秘密としないように瞬いていた
裸足の皮膚に突き刺す人々の目線はそれはねっとりと滑稽油さながらの滑りを見せているから

夜の前に昔の私に聞かねばならない事が二、三あるのだが
必要順に整理をしてしまうともう戻らない場所に置き去りにされてしまうのだ


だから、例えばひとつだけ


あなたの前髪を揃えたハサミの名前や、いつも付けていたストラップの触感
一日の瞬きの回数や、爪切りの時間帯など

記しても記しきれないほどの膨大な情報を口に含んでせせら笑う
その唇に塗るリップの香りを知りたい


自由詩 回顧 Copyright ゆるこ 2010-07-10 20:43:26
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