なつのひかり
ふるる

硝子のセキレイ、鳴き声が届く、彼方、遥かの、
もういないあなたの鼓動、
耳の奥の回廊、すべて、ではない、
稲穂、誘い追う、昆虫たちが歌わない夏、
あふれる、記憶の洪水を押しとどめる、波、
なつのひかり

ひどくだるかった、悪いことをしたからだ、
されたからだ、された、砕かれた窓からの逃走、
コードがからまっている、からまり続けている、
先生、疑問をフラスコで、明日プレパラートに形成し、
燃やし、記録する

廊下が冷たくて平面だと、言った君の数式、
ペンからあふれだす、君と僕の犯した数々の、
血と涙では汚れないよ、君の体液を欲した、軍鶏、
プールから校舎を眺めなければならない、罰、
花を踏み続ける使役、

永遠に守られる君の顎、歯、口、舌、
細い喉を震わせる、指揮棒に白い光がいつまでも、いつまでも

出席番号順に雨が降る
太陽風、黒点、ペスト、流されて
裸の指先が、おそれているあの、点の先、
前に進まない足、悪夢、左からの暴力、右からの、¢coda

翼を下さい、かわりに僕の上半身を捧げます

緑の絵の具は使わない方がいいよ。

何故?

ペストは永遠に撲滅されたの?

雨が君の髪にやさしくふりそそぐ、それを克明に記録、したかった、
かわりに僕の下半身を立ち上がらせる
硝子のセキレイ、踏みつける、ことはしないで
罪を犯さずに守ることなど、
不可能である

日差し、暑いから、避けている黒い影、逃げていく影、追う影、
影ばかりの祝日
もういない僕の息、

初めてあたらしい僕たち
耳の奥の回廊で待ち合わせを
幾年も前から

君の身体の匂い、肩の柔らかさ、
腕の細さ、足の白さ、
笑顔に支配される記憶の洪水を押しとどめる、波、
やっと会えたこの清らかな翼は君
稲穂が轟きながら踊る

なつのひかり


自由詩 なつのひかり Copyright ふるる 2010-07-09 00:26:15
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