水鏡
朧月
足の裏に雨がついた
足の裏からむこうが水の世界になった
ゆうらゆうらと ひったんひったんと
足の底から水がせまる
私はいっそお願いと
沈むチャンスをうかがっている
雨は惜しみなくふる
ばしゃばしゃ無駄な走りを
試みる青年 なのに表情は
瞳は濁っていず はっとした
ここはどこの交差点
水のゆらめきでみえない
ぼやけた車たちがすぎる
木だけが同じように立っている
足裏の水溜りはもう
私をのむ準備をしてる
ふいにぶつかった男の子の髪も
雨に濡れていた
足裏からの水の世界は
男の子のながぐつを濡らし
恐れないこどもはその足を
蹴散らして世界を壊した
目があった男の子は
どこかあのヒトに似ていた