心の箱庭
半島
もう僕の蔵には
ひと握りの米すら残っちゃいません
肌を通り過ぎる風に目を細めつつ
両手を広げるのみです
ハッカの香りが立ち上り
空をますます青くします
青空はいいものです
苛立ちも焦燥も全て吸い込んでくれます
けれど僕の蔵にはもう
吸い込まれるものなんてありゃしません
ほら、ご覧なさい
遠く高く鳶(とんび)が飛んでいきます
ゆっくりと輪を描きながら白雲を裂くように飛んでいます
この草原はなんの実りも与えてはくれませんでした
ただ僕の胸をざわつかせただけで
泣きいるようにすがっても
わめくようにすがっても
何も満たされはしませんでした
ここらは見渡す限りの緑ですが
あの遠くに見える針葉樹の山々
歯に沁みるほど冷たい小川の水
全部、全部飾り物です
ここらはみんな
僕にとっては
緑の色の荒れ野です