幸せの原石
鵜飼千代子

              おもしろくねえなあ
              そう思いながら 
              てけてけ歩いていると

              おおっ! なんだこれは
              幸せが入っていそうな 
              ちびた汚い石 ひとつ
              さっそく持ち帰ってみた
             
              お湯かけてやったり
              ぺろぺろ舐めてみたり
              ふくんで転がしてみたり
              羽毛布団に寝かせてみたり
              ちっとも幸せが輝かないから

              太陽のなかにぶん投げてみたり
              南極のこおり割って沈めてみたり
              シルクでやさしく こすってみたり
              グラインダーでキーンと磨いてみたり
              
              それなのに 幸せは
              まだまだ 足りない

              なんなんだ!
              幸せの原石じゃあ
              なかったのか?

              裏切りだ!だまされた!
              あんまり腹が立ったから
              最後にいかずち 

              ひとつ

              案の定 粉々に砕けやがった
              ざまあみろ!
              手えかけさせやがって

              ところで

              あの くそ憎たらしいちびた汚い石
              あいつと幸せを輝かす方法を
              話し合ったことは
              あったっけか

              いやいや それは関係ない
              俺は俺の幸せのかたちの幸せが
              欲しいのだ

              舌がもつれる 
              くそったれ

              もう大丈夫だ
              なんだか安心したぞ
              これだけ砕いてやれば
              ほかで幸せを輝かすことは
              ないだろう
              これでゆっくり眠れるよ
 
              ね あなたもお休み

              僕のこころのなかで 
              星になって輝くから
              もう 
              あなたはひとりぼっちなんかじゃ
              ない
              一生、僕だけのもの

              愛してるよ

              と、 
              僕は 思う。
 


          1997.07.20.  YIB01036 Tamami Moegi.   
          初出 詩のパティオ  
          改稿 1998.04.06. NIFTY SERVE FPOEM


自由詩 幸せの原石 Copyright 鵜飼千代子 2010-06-30 18:29:55
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