殺してほしい
くなきみ

殺してほしいと
見知らぬ奴が言った
俺は面倒なことに
関わりたくないから
目を合わさないよう通り過ぎた
そうすると奴は
俺の足を引っ掛けて
転ばせた

殺してほしいと
転ばせた奴が言った
俺は奴の胸倉を掴んだが
俺の手を汚したくない
そう言い捨てて通り過ぎた
そうすると奴は
俺の首を引っつかんで
顔を壁に押し付けた

殺してほしいと
押し付けた奴が言った
俺は鼻血が出て殺意が沸いたが
俺はそんなことで人を殺すほど
自分の人生を諦めてなかった
そうすると奴は
どうすれば殺してくれるんだと
ニヤリとして尋ねた

殺してほしいと
奴は相変わらず言っている
奴は俺が殺意を沸くような事を
次々とやってくるんだ
俺が大事にしている物や
愛している人達を
次々と壊していった
そして俺の顔を覗きにくるんだ

殺してほしいと
言ってくる奴を殺してしまった
俺にはもう何も残っていなかった
やっと殺してくれるのか
早く殺してくれればよかったのに
でもまぁ本当にありがとう
奴は笑いながら俺にそう言って
幸せそうに死んでいった


自由詩 殺してほしい Copyright くなきみ 2010-06-28 16:34:08
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