促す雨
海里

名もなき花という言い方がある
名もなき花はたいてい
名もなき花を見かけたり見つけたりされる

でも
毎日一緒にいるクラスメートから
やぁ名もなきクラスメートさんって言われたら
変な気持ちするよね

せめて
名前覚えてなくて悪いんだけどアンタおい!
だよね

多くのひとにとって
確かに多分それは最早とても縁遠いことなのだろう
ご先祖さまたちが
良きにつけ悪しきにつけ
暮らしの中でともにある木々や草々を
かつてどう呼んでいたかって云うこと

学名の命名にかけた
学者さんたちの気の遠くなるような情熱や
その学名がほかでもなく
その花がほかの花ではないってことを
その花自身に宛ててひとが見出した証であるってことも

だけど
そもそも誰も
花の話なんかしてないのだとしたら

いつだって
花にかこつけて
ひとがひとの話をしてるだけなのだとしたら

ひとはいろいろなものを花の向こうに見ている
花を見ている人は少ない


自由詩 促す雨 Copyright 海里 2010-06-27 22:58:55
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