生活
梶谷あや子

自分だけがまちがっていることを
信じてはいても
わたしには疑念などなかった
ただ父は
大抵開けぐちが分からなかったので
最後にはいつも口をつかっていた

色のぬけ落ちた昇降口で
晴れた日わたしは
らんしのせいで
かがやいた髪をながめ
震えながら
ハンドルを握っていた
つたえ方は解らなかったので
不安はやすまらないから
隣りに感触さえあれば
それに鈍さを見いだそうとしていた

けれど時どきは
がちゃん、と嫌なおとがして
布団のなかにまで
口をつかっているやりきれなさが来る
そうしてゆるされたことは
殆んどゆるされることがなく

晴れた日わたしは
空を這う無色を奪いとる
奪いとることにしか
疑念はつたわっていかないから
隣りにある時は





自由詩 生活 Copyright 梶谷あや子 2010-06-27 20:50:12
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