生活
梶谷あや子
自分だけがまちがっていることを
信じてはいても
わたしには疑念などなかった
ただ父は
大抵開けぐちが分からなかったので
最後にはいつも口をつかっていた
色のぬけ落ちた昇降口で
晴れた日わたしは
らんしのせいで
かがやいた髪をながめ
震えながら
ハンドルを握っていた
つたえ方は解らなかったので
不安はやすまらないから
隣りに感触さえあれば
それに鈍さを見いだそうとしていた
けれど時どきは
がちゃん、と嫌なおとがして
布団のなかにまで
口をつかっているやりきれなさが来る
そうしてゆるされたことは
殆んどゆるされることがなく
晴れた日わたしは
空を這う無色を奪いとる
奪いとることにしか
疑念はつたわっていかないから
隣りにある時は