こんな顔をして家には帰れない気がした
ヨシミは自転車で夜を町を走っていた
お母さんをさがしてパチンコ屋さんをわたり歩いていた
カゴのなんでもバッグにケイタイがのぞいていた
目からなみだがあふれていた
風をうけているのに乾かなかった
泣いてるわけではないのかも知れない
風が目にはいってでているだけのなみだなのかも知れない
外灯や町あかりがたまにケイタイのおもてにあたるたびカワバタからの着信かと思って自転車をとめた
なんどめかのあとこんどはほんとにユキオから電話だった
オリオンってほんとどこいっちゃんたんかな、
ユキオはユキオでなにか落ち込んでいるようだった
動いてるんだよ、ユキオ、なにもかも、だって星なんて、宇宙そのものじゃないか、
電波がわるくてユキオの声がかすれていた
おーい、ちゃんと立ってるかー、
ふたりして遭難するわけにはいかないじゃないか
電話がきれてしまった
ヨシミはあるはずもないオリオンをさがして顔をくびを乳房をそらした
自転車がタテにたって右手だけハンドルにのこしてひっくり返った
花束が空から降ってきてそれをヨシミは宇宙桜だと思った
いてててて、
両手をついたままヨシミはひじをつき背中をつけて頭を地べたにつけた
花の残像が夜をかすめてそこにゆっくりと群青がひらいた