夜の飽和
真島正人

放射される熱を
感じていたんだ
夜更けの草原に
寝そべって
仲のいい
グループで
語らいあった
見上げた空には星
点滅しないきらめき
声が聞こえていて
声は聞こえていない
放射
されていたんだ
なんとも言えない
口では
表現の出来ないものが

空想は
空想ではなくなり
どんなことでも
出来そう
嘘とか本当とかの
区切りが馬鹿馬鹿しくなり
脳が
感知度を放棄したんだ

だから
手は握らなかった
手を握ることそのものが
意味を失ったような気がした
空気のように
呼吸が
別の意味に摩り替わり
体ごとの発熱が
胎盤よりも
深い絆で
溶け合うような気がした
そのとき
確かに放射される熱が
あるような気がしたんだ
放射される
温度を持つ何かが
あの瞬間を
切り抜き
この脳に残し
永遠は
永遠として
時間とは別の位置で
生命としての呼吸を
ループする(おそらくは、きっと……)

ちかちかと
星が光っていればよかった
繰り返しが
時間の進行と
引き換えなのだと
暗示させるものがあればよかった
だがあの夜には
それがなかったので
それをこの瞳は
見なかったので
放射されている
熱だけがすべてだった
感知のすべてを
しのぎ圧倒
してしまった
涎よりも
濃厚に
あらゆる層を
べちょべちょと
這い
その瞬間を
止めてしまったんだ


自由詩 夜の飽和 Copyright 真島正人 2010-06-27 03:05:51
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