雨降る放課後
愛心

「傘、忘れたの」


鞄の中の折り畳み傘を 奥底に押し込みながら
貴方の手元の傘に目をやった

貴方は少しだけ 困ったように目を見開いて
慌てたように そっと周りを見渡して
わたしの方にすぅっと傘を突きだした

遠慮がちに 貴方へ一歩踏み出すと
貴方の傘を握る右手が 肩とともにぴくりと上下する

期待してた反応に ひっそりと笑う

「さあ、帰ろう」


夏服から伸びる 貴方の骨ばった左手に手を伸ばし
触れる寸前 一時停止
戸惑う横顔に 微笑んで

「繋いでもいい?」


頷く貴方に 心からはにかんで
引っかけるように 貴方の手にわたしのそれを重ねた

踏み出した足 跳ねる水たまり

嘘つきなわたしから 不器用な貴方に
告白するまで 10テンカウント

成功率は99%

「相合傘なんて、恥ずかしい」

貴方は言ってたものね

ねえ 友達から 恋人になったら

今度はわたしの折り畳み傘で


自由詩 雨降る放課後 Copyright 愛心 2010-06-26 23:37:25
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