シオマネキ(未詩・独白)
プル式
大きな右腕のはさみを振り上げながら
あちこちで何かを話し合っている
静かな潮騒になら負けないくらい
その小さな声は辺り一面に満ちている
プチプチと話すのは毎日の事
今日はいい天気ですね
もうじき台風がくるらしいですよ
夏ですものね仕方ないわ
この間人魚が泡になったんですって
まぁ今年何人目かしら
俺たちの泡に混ざっちゃないだろうな
混ざるもんかいあれは儚さが売りなんだから
ああ今日はなんて暑いんだ
小さな小さな四方山話はつきる事無く
今日も平和だなぁと感じる
潮風にゆれる防風林と空にたゆたう白い雲
今日ものんびり甲羅を干しつつ潮招き
おっと危ない海鳥だ
平和なんてウソウソ。